介護の問題はもう個人の問題ではない

昔私が子供の頃には、家族の中に寝たきりの老人がいて誰かがその世話をしているなどという状況は、特殊な家庭の特殊な時期のことだというイメージでした。ところが今、日本で暮らす人たちの中で、介護の問題に全く無縁な人などほとんど居ないのではないでしょうか。

今現在大変な介護生活の中にあるという事ではなくても、いずれは自分の両親あるいは配偶者の両親の介護に直面するであろうと考えられる予備軍、また、医療技術の進歩により大変な障害を抱えながらも命を取り留めた人たちが、介護を必要として社会の中で生活していて、その数は増加する一方です。

今私たちは、加齢によっても、事故や病気によっても、簡単に命を落とすことは無い時代に生きています。それは言い換えれば、簡単には死ねない時代に生きているのです。

どんなに経済的に豊かになっても、将来何が起こるかはわかりません。それでも、希望や安心よりも、不安や絶望がはるかに大きくなってしまうようでは、その社会は破綻してしまうでしょう。加齢や病気、けがなどによって必要となる介護の問題を希望が持てる方向に展開しようと模索する今こそが、日本社会が破綻の危機から逃れられるかの分岐点なのかもしれません。