認知症治療の最前線

“超高齢化社会に突入しつつある日本において、認知症の問題は深刻になりつつあります。単に日常生活を普通に送ることが難しくなるばかりではなく、認知症の症状は様々で、介護者の負担は大きいものになりがちです。

一人の要介護者に何人もの介護者の労力が必要となるケースも多く、従来のように、その負担と責任を家族の中で負っていくのはもはや不可能になってきています。

認知症の中でも多くの割合を占めているアルツハイマー症の治療については、その判定技術や治療のノウハウなどの普及が急がれています。アルツハイマー症も他の病気と同様に、早期に発見し治療を始めれば、完治することは無くても、病状の進行を遅らせる効果はかなり期待できる段階にまでなってきています。

早期発見の担い手は家族など周りの人たちであり、社会全体の意識改革も求められていると言えるでしょう。認知症予備軍とされる人たちに、積極的に発症予防に取り組んでもらう働きかけも、後の介護者の負担軽減に大きく寄与することでしょう。”

認知症患者とその予備軍

“最近の調査では、現在日本には認知症患者が約460万人以上、さらにその予備軍が400万人以上いると考えられています。

現在65歳以上の高齢者の15%が認知症と考えられるわけですが、いわゆる団塊の世代と言われる人たちが後期高齢者になっていく2025年前後には、その割合はさらに高くなることが予想されています。

今や目前に迫っているこの想像を絶する高齢化社会の到来を前に、早急な対策を取ることが求められています。年金の問題が取り沙汰されていたころ、数人の若者が一人の高齢者を背負っていたのが、これからは一人で一人を背負っていかなければならなくなるといった図が紹介されていましたが、そこに介護の問題が絡んでくると、一人で何人もの高齢者を背負って、面倒も見て・・・といった状態になっていってしまいます。

認知症の高齢者が線路内に侵入したことによる損害を、鉄道会社がその介護者に請求し、それが裁判でも認められたという記事が世間を騒がせているようですが、こういった介護の問題や責任を個人に負わせているようでは、これから来る超高齢化社会は、機能していかなくなることでしょう。”

介護の問題はもう個人の問題ではない

昔私が子供の頃には、家族の中に寝たきりの老人がいて誰かがその世話をしているなどという状況は、特殊な家庭の特殊な時期のことだというイメージでした。ところが今、日本で暮らす人たちの中で、介護の問題に全く無縁な人などほとんど居ないのではないでしょうか。

今現在大変な介護生活の中にあるという事ではなくても、いずれは自分の両親あるいは配偶者の両親の介護に直面するであろうと考えられる予備軍、また、医療技術の進歩により大変な障害を抱えながらも命を取り留めた人たちが、介護を必要として社会の中で生活していて、その数は増加する一方です。

今私たちは、加齢によっても、事故や病気によっても、簡単に命を落とすことは無い時代に生きています。それは言い換えれば、簡単には死ねない時代に生きているのです。

どんなに経済的に豊かになっても、将来何が起こるかはわかりません。それでも、希望や安心よりも、不安や絶望がはるかに大きくなってしまうようでは、その社会は破綻してしまうでしょう。加齢や病気、けがなどによって必要となる介護の問題を希望が持てる方向に展開しようと模索する今こそが、日本社会が破綻の危機から逃れられるかの分岐点なのかもしれません。